【帯広刑務所編】晴天の日、久しぶりの「生」モンローウォークと母への思慕《懲役合計21年2カ月》
シャバとシャブと地獄の釜Vol.04
元ヤクザでクリスチャン、今建設現場の「墨出し職人」さかはらじんが描く懲役合計21年2カ月の《生き直し》人生録。カタギに戻り10年あまり、罪の代償としての罰を受けてもなお、世間の差別・辛酸ももちろん舐め、信仰で回心した思いを最新刊著作『塀の中はワンダーランド』で著しました。実刑2年2カ月!
女性をナマで見ることができない塀の中で久しぶりに見た「美女」はじんさんの心と体に「男」がみなぎった。でも、女性の姿に「母」を見る懲役もいるようで・・・身のつまされるシーンが続きます。
■晴天の日のモンローウォーク
朝の点呼が終わると、夜勤務の看守が部屋の窓から顔を覗かせた。
「サカハラ、転房するからな。荷物をまとめておくように。忘れ物ないようにしろ」と、言いながら、布団と同じ生地で煉瓦色と緑色の縦縞模様の入った大きな風呂敷包みを食器口の窓から入れてきた。
こうしてボクは外役(塀の外で行う務め)へ上がった。
部屋の扉は半分がガラス張りになっていて、鍵がなく、便所もなかった。鍵がないということは、自由に出入りができ、どの懲役の部屋へ遊びに行ってもいいということだ。
夜。疲れているにもかかわらず、入口の扉に鍵がかかっていないことがどうにも気になって寝つけない。表から鍵がかけられていないと、どうにも落ち着かないのだ。
ときどき布団の中から頭をもたげては、足元の入口の扉を気にして見ていた。便所に行きたくなって起きていくとき、入口の扉をそっと開けて廊下をキョロキョロと見回し、忍び足で便所へ向かう。
部屋に便所があり、扉に鍵がかかる環境にすっかり慣らされてしまっているボクには、この開放がまったく不安で居心地が悪かった。刑務所の中で鍵のかかっていない部屋を経験したのは初めてだったから、何とも落ち着かない妙な気分だったのだ。
そんな日が続き、毎日雪きをしていたある晴天の日、ボクたち懲役はスコップや箒を担いで塀の外へ出動し、一戸建ての所長官舎や、鳥の巣のように並んだ看守たちの官舎の通りの雪かきを始めた。
しばらくすると、前方から年の頃は三〇代後半と思しき、長い髪をカールにし、細身のパンツがお尻にフィットしたスタイルのいい女が、モンローウォーク調で腰をクイクイ振って歩いて来た。
帯広刑務所に護送されるときに機内で出会ったスッチー以来、久し振りにお目にかかる本物の女を目にして、思わず鼻の穴をピクピクさせる。
なかなかエロっぽいじゃん。あんな罪な腰の振り方をして、あれじゃあまったく道徳違反だぜ。あ~、堪らねえなァ、などと思いながら、だんだん近づいて来る女を、雪掻きをしながらチラテンを切って(チラチラ見て)いた。もう、ボクのか弱い心臓がドキドキ、パコパコと高鳴る。
じっくり観察してみたかったが、どうにもバカ面を晒してしまいそうなので、ボクは下を向いたまま、知らない振りを決め込んで雪かきに励む。
女が腰をクイクイ振りながらボクの横を通り過ぎると、ボクはこのチャンスを逃すまいとして素早く後ろを振り向き、両目をバッチリ見開いて、女のお尻を凝視した。
プリンプリンとした肉付きのいいお尻に喰い込んだパンティの細いラインがうっすらとV字型に浮かび上がって、右に左に律動して揺れていた。このとき、ボクの目は血走り、理性がぶっ飛びそうになっている。
ボクの後方で雪かきをしていた仲間たちも、女の存在に気がつかない振りをしながらも、女が通り過ぎると次々に後ろを振り向いていた。なんと、雪掻き班の全員が方向転換して、女のお尻に喰らいついていたのである。
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2020年5月27日『塀の中のワンダーランド』
全国書店にて発売!
新規連載がはじまりました!《元》ヤクザでキリスト教徒《現》建設現場の「墨出し職人」さかはらじんの《生き直し》人生録。「セーラー服と機関銃」ではありません!「塀の中の懲りない面々」ではありません!!「塀の中」滞在時間としては人生の約3分の1。ハンパなく、スケールが大きいかもしれません。
絶望もがむしゃらに突き抜けた時、見えた希望の光!
「ヤクザとキリスト〜塀の中はワンダーランド〜」です。